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メルマガ第31号 【タイの産業廃棄物問題】

有害廃棄物の不法投棄問題 ~それは10年以上にわたって次第に深刻になり、慢性的な問題となっています。政府は、産業発展を進めていく上で、環境汚染の問題を早急に解決しなければなりません。ここ数か月で産業廃棄物を正しく処理していない事業者や、違法に海外から廃棄物を輸入する業者などの事例が多く報告されています。
管轄している工業省は、リサイクルや廃棄物処理業者の法規制の強化などを行い、問題を解決する方針で進めています。
新しく就任した工業大臣も、これらが早急に解決すべき重要事項として、国内のリサイクル工場を視察し、近隣住民に早期解決を約束しました。

【廃棄物処理事業の現状と問題 工場局長の発言】

現在タイでは、廃棄物処理工場、特にリサイクルプラントからの有害廃棄物の不法投棄や基準を守らない汚水・ガスの廃棄問題がエスカレートし、多くの地域で人々と環境に重大な損害を与えるような状況が広がっている。
過去10年間で、ラチャブリー県、ペチャブーン県、ラヨン県で問題のあった工場が近隣住民から訴えられ、敗訴。しかし、この時、住民たちは、工場管理を管轄している工場局や政府ではなく、NGOの助けを借りて、自ら立ち上がり問題を提議した。
住民たちの中では、「工場局(政府)」が住民ではなく工場を擁護する立場に重きを置いているという印象を持っていたということが原因の一つであった。
このことから工業省工場局は、工場許可の発行から管理および監督までの権限を持つ唯一の機関として、その役割について改めて考えるきっかけになり、有害廃棄物の違法処分を阻止するための「戦略と方法」を初めて発表した

ポイント1-「廃棄物生成者は責任を負わなければならない」

タイで廃棄物処理業者の役割を果たす工場の種別は3つあり、有害廃棄物処理、無害廃棄物埋立地の分別、そしてリサイクルとなっている。 合計で約2,000の許可があり、廃棄物生成者が廃棄物の処分を選択するための多数の代替手段になっている。
しかし、問題は、法律では処分先として誰を選ぶかという部分に言及していないことで、廃棄物を排出する工場は、工場局が発行する有効なライセンスを持っている事業者であれば、廃棄物を誰が処理できるかを選択できる。処理業者により、廃棄物価格の値下げ競争が行われ、実際に適正に処理するために必要な経費を下回る費用で取引されてしまう。そのため、処理しきれなかった廃棄物が違法に投棄される結果につながっている。実際に合法的に優れた廃棄物処理工場は国内に沢山あるが、価格競争には勝てないため選ばれることが少なかった。
廃棄物生成者は処理業者に渡した時点で責任がなくなり、どこに廃棄されても罪悪感はなくなるので、まずはそれを直さなければいけないと考えた工場局が「廃棄物生成者(違法に輸入した場合も含む)は責任を負わなければならない」という新しい通知を発行した。

ポイント2―「被害者への救済を迅速に行う」

ラチャブリー県のワックスガベッジ社の問題は、20年にわたり周辺住民へ影響を与え続けている。適正に処理されていなかった有害廃棄物のせいで、周辺住民への健康被害が問題視されていた。村人はタイで初めての環境訴訟を起こし、判決まで長い時間を要したが、勝訴となった。
ところが、工場側は、資金の問題で被害者への賠償金も有害廃棄物の処理も進めずに、多くの廃棄物を埋め立てたため、現在でも地下水源への影響が残っている。
この特定のケースでは工業省は100億バーツの「中央予算」の承認を閣僚に求めた。
被害者救済と廃棄物処分、環境回復などにこれらを充てる。支援金は事業者から返済するように手順を整える。これがもとになり、新政府に「産業影響回復基金」の設置を提案している。
その他、不正な行為を行った工場に対する工場局の権限の見直しや、産業発展と周辺住民との調和について工場の検査や管理監督の方法を通して双方にとって良い方法を模索していく。

【産業廃棄物問題の事例】

  1. パームオイル工場のケース

    チュムポン県にある、パームオイルの搾油と廃液からバイオガスを生成している工場に対し、周辺住民からのクレームがあり、工業省担当官が工場を視察。
    近隣住民からは、工場から排出される処理水が決められた基準を守っておらず、健康被害や周辺の農作物への被害が出て不安視されていた。
  2. 化学品を含む産業廃棄物の処理

    長年にわたり、不正な有害産業廃棄物の処理による被害が報告されていたが、改善の姿勢が見られず、さらに弁護士を立てて、検察担当官が工場敷地内へ立ち入るのを妨害。
    その警察官50名を伴い工場へ立ち入り検査を強制的に行おうとしたが、それも妨害。
    話し合いの末、検査担当官の立ち入りが許可されたが、弁護士が不法侵入や強盗の疑いがあるとし。検察へ訴える姿勢をしめしている。
  3. 電子廃棄物の不正輸入

    チャチュンサオ県にある工場で、1,960個の電子廃棄物、60台のノートブック、1,000kgの電子部品が発見された。さらに、別工場では、大量の電子廃棄物を収集・分別する場所として使用しており、そこでも1,000トンを超える廃棄物が発見された。
    違法に海外から輸入された電子廃棄物は、大気汚染を起こす可能性があり厳重に取り締まる必要がある。事業者は、製品のいくつかは地元の村民から購入したと証言していたが、それを証明するものはなかった。
    また、これらの工場は事業内容について正しく通知していない上に、許可のない機械の導入や作業工程で排出されるガスを大気汚染除去する工程を経ていないため、基準を満たしていないということが判明した。
  4. 汚染水の漏洩

    ラヨン県にある廃棄物処理業者S.K. Interchemical社から作業依頼を受けたWinprose社の工場敷地内にある貯水池に、適切な処理を行っていない汚染水が検出された。
    工場内のバルクコンテナから刺激性の化学臭があり、処分・分別の工程を待っている間に廃棄物から漏れが生じていた。工場内に流れた液状の廃棄物は、排水溝を通り、工場周辺の池に流れ込んだと考えられる。
    また、電子廃棄物や医療廃棄物などWinprose社が、取り扱い資格のない不正な廃棄物、バルクコンテナの鉄骨部分が切断された痕跡、盗品とみられるトラック部品なども見つかった。
    ラヨン県はタイ政府が推進するEECも所在する重要な工業生産拠点であり、環境保全を遵守するために、工業省は厳密に監督する必要がある。今後、東部工場公害研究センターにおいて、工場内部および影響を受ける水源の水質を監視し、継続的にモニタリングする。

【工業大臣による現地視察】

ピムパトラー工業大臣が、ラチャブリーで火災事故を起こしたリサイクル工場(ワックスガベジ社リサイクルセンター)の廃棄物処理の進捗状況を確認する目的で、視察を行った。
同工場は20年以上にわたって問題視されていた、工場の操業について、住民と衝突しており、政府から工業省工場局の担当官が視察を行うよう指示されていた。過去に幾度にもわたって、危険物取扱や工場の改善指導などが行われていたが、依然として、大量の産業廃棄物や化学廃棄物の残留物があり、近隣住人や農業従事者から、汚水や排気ガスに関するクレームが寄せられている。
今回の訪問で、工業大臣として、工場周辺の人々の問題を深刻に認識していることを伝え、長期にわたって慢性的で、かつ公共に影響を及ぼし、人々と環境を汚染する産業廃棄物の問題を手順に従って迅速に解決し、できるだけ早く実施をするように指示した。
政府は、ワックスガベッジ社リサイクルセンター敷地内の汚染水、廃棄物、化学廃棄物残差の処理を実施するために、2023年度の緊急予算を当てることを承認し、工業省担当官は分析のためのデータサンプルを採取した。
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