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メルマガ第13号 【TJICインタビュー】

 クロスロード・キャピタル㈱はタイ工業連盟の傘下に2020年7月設立されたタイ日本産業協力機構(TJIC)の初代会長を務めていらっしゃるチラパン・ウンラパトーン氏への独占インタビューを行いました。
 若いころにインターンシップで日本に住んでいらっしゃった経験もあり、日本に対する特別なお気持ちやタイとのつながり、両国の経済発展のために尽力されているその思いを熱く語ってくださいました。
tjic_interview
2021年11月29日 オンラインインタビューの様子
 
■コロナ渦におけるタイ経済の現状について
 Crossroad Capital 鈴木倫子(以下 鈴木):
 コロナウィルス感染拡大によるタイ経済全体に与えた影響と現在の状況についてご教示ください。(業績が縮小してしまった業種、一方で、業績が伸びている業種など。)
 
 TJIC チラパン・ウンラパトーン氏(以下 チラパン会長):
 まず、世界的にコロナウィルスの感染拡大が始まってからのタイへの影響は、大きく二つの時期に分けて説明ができると思います。
 コロナウィルス感染拡大が世界的に蔓延し始めた2019年末から2020年では、当初、タイの感染者は少なく、また、コロナウィルスの脅威などについてもあまり理解が深くなかったが、徐々に感染者が増えてきて、国の政策で全国的にロックダウンが行われ、工場なども休業せざるを得ない状況となり、国全体が混乱していました。
 2021年に入ってから、前半は状況が良くなり一度落ち着きを取り戻したように思えましたが、その後、第2波の影響により、タイでの感染者が激増し、重症者や中等症患者数が、医療施設のベッド数を越えてしまい、医療崩壊となる大変な事態になりました。
 ご存じの通りタイは観光業が主要な産業です(コロナ前のFY19ではGDP 19%前後)。ですので、旅行関連の産業である、航空業やホテル、レストランなどは、大変な打撃を受けてしまいました。飲食業に関しては、ロックダウンの期間中はお店を開けることができないので、それも大変な影響を受けたようです。
 しかし、すべての産業が悪影響を受けたわけではなく、急伸している業界・産業もございます。政府の推奨「ステイホーム」の影響により、在宅勤務者が増えたため、人々は自宅で過ごす時間を多くなりました。そのため、IT関連の機器や家電製品、インスタント食品などの加工食品の需要が高まったことにより、これらの業界・産業は急伸しました。
 
TJIC設立の目的とその役割
 鈴木:TJIC設立の背景と目的、その役割と位置づけ、活動方針について教えてください。また、活動を補佐する日本の協力機関についてもコメントいただけたらと思います。
 
 チラパン会長:タイ日本産業協力機構(Thailand Japan Industrial Cooperation Institute: TJIC)は昨年、タイ工業連盟(FTI)の傘下に設立されました。元々、FTIはタイ国内にある日本の主要な機関(例えばバンコク日本人商工会議所(JCC)やJETRO、在タイ日本大使館など)と連携をしておりましたが、これまで、専用窓口は設けられておりませんでした。日本はタイにとって大切なビジネスパートナーでありため、専用窓口を設けより強力な関係を築いていく必要があると考え、FTIのスパン会長がTJICの設立を提案されました。私は2020年7月から初代会長として、タイ国内にある日本の主要機関との連携強化を図っております。
 
 昨年設立しましたが、実際のところ、すぐにコロナウィルスの感染拡大が起こってしまったため、残念ながら、まだ具体的な活動は行えていません。現在は、まずTJICという存在を広く知ってもらうために、大使館やJCCを訪問して、設立の目的や役割、活動について説明しています。
産業発展と言っても我々の使命はたくさんあります。その中でも貿易関係などは優先順位を高く設けながら推進していくことが大切と考えています。
 現在TJICには4つの政策があります。
 1つはJCCの会員企業に、FTIへ加わっていただきたいと考えています。JCC現在約1800以上の日系企業が登録されていますが、それらは業種などに分類されておらず、横の連携もあまり見られません。その点FTIは現在10000企業が登録されていてそれらは45業種に細かく分類されています。この45種はタイ国内にあるすべての産業の分類とほぼ同じであり電子は電子、農業は農業といった分野ごとに協力連携をとれる仕組みがあります。また、FTIはタイ政府とのつながりも強いので、JCCのメンバー企業にとっても、タイ政府との連携がとれるメリットがあります。
 2つ目は正確な情報提供を行うということです。現在タイだけでなく近隣のアセアン諸国でも同様に投資政策を掲げ、企業誘致を行っています。そのような中で、メディアによって正しくない情報が広まり、「タイは投資状況が良くない」という間違った認識を持たれることを我々は懸念しています。投資奨励の情報やその方法についてはBOIのような専門機関があり、ワンストップセンターなど投資家が便利に利用できる機関があります。我々は実際の生産輸出などの統計データを毎月ウェブサイトで公表することにより、よりリアルな経済状況を投資家の方たちに知ってもらえるような環境を整えたいと思っています。
 3つ目は人材育成です。現在日本からの投資は減速傾向にあります。その理由として、私がよく耳にするのは、タイはBOIの奨励策やEEC、近隣国への高速鉄道の建設などハードの面ではとても魅力的な投資国ではあるけれど、人材が不足しているという点です。政府もエンジニアの育成やタイランド4.0の政策に力を注いでいますが、弊社(Sumipol Corporation )は住友電工とパートナーを組んで民間の技術研究所Sumipol Institute of Manufacturing Technology (SIMTec)をアマタ工業団地の中に設立しました。20社以上の日系企業から協力で工作機械の寄付をしていただき、ITや製造技術に特化したエンジニアを育成する研究所としてタイランド4.0やEECの発展に貢献していきたいと考えています。
また今は日本の一般財団法人海外産業人材育成協会(AOTS)からも協力いただき‘Re-Skill’ ‘Up-Skill’ ‘New-Skill’という3つをテーマにしてタイに不足している技術者の育成プログラムも行っています。
 
 4つ目は日本との技術連携強化です。特に農業において日本は高い技術があります。冷蔵保存などタイの農産物を長く良い品質を保つための技術を向上させたいと考えています。
その他にも様々な機関がビジネスマッチングを行っていますが、そのスタイルについてももう少し商談成立の確立が高くなるような効率的な方法について考えたいと思います。例えば業種をしぼって、時間をもう少し長く具体的な話し合いができるような場を設けられたら良いのではと考えています。
近くに関西経済連合会の会長ともその案件でミーティングを行う予定です。
 
 ■コロナ前後の事業の状況
 鈴木:いま、お話に出ました、会長が役員を務められているSumipol Corporationの近年の状況についても教えていただけますか?
 
 チラパン会長:我々の会社は自動車産業に関連した工作機械などの製造がメインです。
 昨年はロックダウンの影響などもあり売り上げが約30-40%下がりました。これはタイ全体の経済の減少率と同じくらいです。2021年は少し回復してきていますが、ただ世界的なチップの不足などにより期待しているより生産は伸びていません。
 
 鈴木:コロナ渦による政府からの支援について教えてください
 
 チラパン会長:コロナ渦での政府からの支援は、ワクチンの無料接種をはじめ中小企業であれば低金利のローンなどがございました。また従業員の雇用を保持するための助成金などもありました。弊社は従業員の解雇には至りませんでしたが、仕事が少なくなったり、満額の月給が支払えなかったり、また地元へ帰りたいといった理由で離職する従業員もいました。
政府が推奨する在宅勤務については、弊社のように業種によっては難しい場合もあると思います。弊社は製造業ですし、またシステムもまだ整っていなかったので在宅勤務が行えるのは全体の20%程度になっています。
 
 鈴木:コロナの影響で事業転換を検討されたことはありますか?
 
 チラパン会長:大きな企業であれば事業転換のための資金もあってその可能性はあるかもしれませんが、中小企業はなかなか転換に踏み切れないのが現状です。今自動車産業はガソリン車からEVへの変換期でもありますから、弊社としてはそのEV用の制作フォームへの体制を整えているところです。今までは切削工具を多く取り扱っていましたが、今後はロボットや自動化といったデジタルトランスフォーメーションに力を入れていきたいと思います。それにともなった人材育成も検討しています。
 
■日本企業との今後の展望
 鈴木:最後に日本を含む外国企業へ期待することがあれば教えてください。
 
 チラパン会長:私はインターンシップで日本に留学経験があります。その時に目にしたのは、夜遅くまで勤勉に働く日本人の姿でした。タイ人の「サバーイサバーイ」(楽観的?な)との違いに驚きました。日本の方々の仕事に向き合う姿勢に感銘を受けて、それが今の会社にも多く取り入れられています。初めて弊社を訪れる方は日系企業と勘違いされる方もいるくらいです。
また、近いうちに泰日工業大学(TNI)の理事に就任予定です。もっと日本企業のニーズにこたえられるような人材育成に貢献していきたいです。
 
【最後にCrossroad Capital 辻佳子より】
 このたび、FTIが日タイ戦略的パートナーシップの強化に向けてのTJIC発足・設立されたことをお喜び申し上げると同時に、このようなコロナの状況下において、こういった喜ばしい取り組みがスタートすることに、大変期待をしております。
 また、これまで長年にわたって、日タイの相互互恵関係の構築に向けて奮闘されてきました、経験値の高いChirapan Oulapathorn(チラパン ウンラパトーン)様が会長としてご就任されましたことも、大変心強く思っております。
このようなコロナの状況下ではございますが、当社も微力ながら、日タイ相互の理解・ビジネス機会の創出の一助になるよう努めたく、このTJICの設立目的等について本メルマガにて日本の皆様へパブリッシングをさせていただきました。
 
2021年11月29日 オンラインインタビューより

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