下院総選挙から3か月、難航していた首相の選出がようやく決着し、タイ貢献党のセター・タウィーシン氏が正式に第30代首相に任命されました。今後、どのように新政権が発足され、またタクシン元首相の動きも注目されています。
第30代首相が正式決定
【任命後のセター氏の発言】
タイは現在大きな転換期を迎えており、緊急の解決策を必要とする危機や問題を抱えている。社会の不平等や汚職などを解決し、国民の収入や生活の保障などに取り組むための政策を実行する。
国家予算を透明かつ効率的に管理し、民間セクターとの良好なパートナーシップを構築し、官民両者が同時に成長していけるような仕組みを作る。
国家予算を透明かつ効率的に管理し、民間セクターとの良好なパートナーシップを構築し、官民両者が同時に成長していけるような仕組みを作る。
在任期間4年間を変化の期間になると確信している。
今後、各省の大臣など重要ポストが選出され、ようやく新しい政権が始動することになる。
セター氏のバックグラウンド
【政界に入るまで】
セター氏は1962年生まれの61歳。マサチューセッツ大学で経済学の学士、その後クレアモント大学院大学で財政学の修士を取得した。
卒業後はアメリカの大手一般消費財メーカーProcter & Gamble(P&G)社に製造管理アシスタントマネージャーとして4年勤務したのち、1988年に不動産開発関係のSansiri社を立ち上げ、不動産業界で多額の富を築いた。
【政界への参入と政策】
SNSなどを活用してビジネスのノウハウやビジョンを広く広めてきたセター氏は、若い世代からの指示も多く、そのことから、COVID19や経済危機からのタイ復興のリーダーとしての資質があるとタイ貢献党から注目をあびた。
セター氏自身も、過去2回のクーデターや激化した社会的、経済的、政治的問題、そしてCOVID-19パンデミックにより露呈した不平等を解決しなければならないという関心を抱き、政界へ参入することを決め、2023年5月の総選挙に出馬し当選。
これまでの企業経営などの経験から、低所得者向けの補助金、洪水問題の解決、諸外国でタイ人のビザ免除、社会保障の権利・福祉の平等性、ジェンダーの多様性の権利、医療用マリファナのみの使用許可など、国民の関心度の高い政策を掲げている
セター氏自身も、過去2回のクーデターや激化した社会的、経済的、政治的問題、そしてCOVID-19パンデミックにより露呈した不平等を解決しなければならないという関心を抱き、政界へ参入することを決め、2023年5月の総選挙に出馬し当選。
これまでの企業経営などの経験から、低所得者向けの補助金、洪水問題の解決、諸外国でタイ人のビザ免除、社会保障の権利・福祉の平等性、ジェンダーの多様性の権利、医療用マリファナのみの使用許可など、国民の関心度の高い政策を掲げている
今後の展望 軍事政権との連立
総選挙でタイ野党第一党となったタイ前進党は党首のピター氏が議員辞職したのち、野党8党で組んでいた連立も解消。その後、第二党の貢献党はその他の野党や与党と協力関係を結んだ点についての批判がある。事実、22日の首相指名選ではタイ前進党議員149名全員(1名は急病のため棄権)が反対票を投じている。
上記を含め、まだ多くの課題が待ち受けているため、外部メディアも、新政権の行く末を注意深く見守っている。
民主党の中にはタクシン元首相を退陣に追い込んだ軍事クーデターで取り締まる側にいた人たちがおり、貢献党支持者の中には連立や協力は難しいと考えている人もいる。
一方、セター氏は、いわゆる「タクシンファミリー」ではないことから、保守派が正当かつ安定して権力を維持するための緩衝材として適任とも言われている
また、セター氏の経済に対する深い知識と経験は、現在タイが抱える経済問題を解決し、エネルギー料金の削減や自由貿易協定の推進など、外国投資家にとって魅力的な政策を打ち出してくれると期待されている。
民主党の中にはタクシン元首相を退陣に追い込んだ軍事クーデターで取り締まる側にいた人たちがおり、貢献党支持者の中には連立や協力は難しいと考えている人もいる。
一方、セター氏は、いわゆる「タクシンファミリー」ではないことから、保守派が正当かつ安定して権力を維持するための緩衝材として適任とも言われている
また、セター氏の経済に対する深い知識と経験は、現在タイが抱える経済問題を解決し、エネルギー料金の削減や自由貿易協定の推進など、外国投資家にとって魅力的な政策を打ち出してくれると期待されている。
【国民の反応】
- 5月に行われた総選挙で、国民の意思がその結果に表れ、タイの政治は過去に戻すのではなく、未来に向けて歩き出したと感じていた。民主主義とは、国民が権利を持つものと信じていたが、選挙とは儀式的なものでしかないということが判明した。
- タイの民主主義は装飾的なもので国民に主権はない。議会制度への信頼は大きく揺らいでおり、国民の信頼を得ない政治の将来に危機を感じている。
こうした否定的な意見がある一方で、前進党の多くは政治に関して素人が多く、政権運営は難しいため、今回のような結果になり、安定した政治が期待できるという意見もあった。
タクシン元首相との関係
首相が選出された同日、タクシン元首相が15年ぶりにタイへ帰国した
タクシン氏が深く関係するタイ貢献党が政権を主導することを確信し帰国に至ったといった憶測が飛び交う中、帰国後、高齢のタクシン氏の体調を考慮したうえで、新型コロナ感染の検査などの健康身体検査が完了したのち、警察病院に収容された。3つの事件(輸出入銀行貸付詐欺事件・政府宝くじ事件・シンコーポレーション事件)で合計8年の懲役刑に服するため、法律に基づき裁かれる。
タクシン氏が深く関係するタイ貢献党が政権を主導することを確信し帰国に至ったといった憶測が飛び交う中、帰国後、高齢のタクシン氏の体調を考慮したうえで、新型コロナ感染の検査などの健康身体検査が完了したのち、警察病院に収容された。3つの事件(輸出入銀行貸付詐欺事件・政府宝くじ事件・シンコーポレーション事件)で合計8年の懲役刑に服するため、法律に基づき裁かれる。
セター氏を首相指名選に推薦したのはタクシン氏とも言われており、与野党の賛成票の多さから、今でも同氏の影響が深く残っているという見方もある
2023年8月31日には、国王陛下の恩赦を申請したことがウィサヌ現副首相により明らかにされた。もし恩赦が認められ、新政権発足後にタクシン氏が政界に返り咲いた際に政治基盤を持たないセター氏がどれだけ自身の特色を生かし、存在を確立できるかが不安視されている。