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メルマガ第3号 【COVID後のタイ経済 EEC EV】

国内の経済活動が再開し、減少した外国投資の回復のためにタイ政府はセミナーなどで首相や大臣自らが先頭に立って積極的に経済政策を発表しています。しかし、依然としてCOVID-19による経済への影響や、タイの政権変動によるEEC政策への今後の動向について、不安を抱える関係者が多数いるということも耳にします。
今回のメルマガでは、タイ政府がセミナーなどで講演した現在のタイの経済状況や、EECの進捗状況、またBOI(タイ投資委員会)で公表されているデータやニュースの中で特に目立った次世代自動車産業に焦点を当てて情報をまとめました。ご参考になれば幸いです。
 
【COVID-19 および政権変動による、EECプロジェクトへの影響について】
EEC(東部経済回廊)をはじめとするタイの経済政策を導引していたソムキット副首相ら閣僚の経済チームが7月に辞任しました。
関係閣僚の退陣により、今後のプロジェクト遂行に影響があるのではないかと懸念している関係者から寄せられた質問に対し、
2020年11月6日に開催されたJTECS日タイ経済セミナーでEEC特別顧問のシハサック・ブアンゲッゲオ氏の発言によれば、
EEC政策は人ベース政策ではなく首相をはじめ各省庁の大臣や関係機関を総動員してタイ国家全体で推奨しているプロジェクト。
今後の計画についても内閣で承認が下りているので、政策に変更はないという保証があるとのことでした。
現在は、スパタナポーン副首相兼エネルギー相を中心とした経済チームがEECに関する政策及びプロジェクトの遂行を担当しています。
 
現在のEECの進捗状況
EEC主要6プロジェクトのうち、ウタパオ空港を含めた3プロジェクトについては既に民間企業と契約も済んでおり、建設が予定通り進んでいます。
現在インフラ整備の進捗状況として3つの空港を結ぶ高速鉄道は2025年に開始予定、完成後は9駅220kmの距離を60分で結ぶことが可能になります。
マプタプット工業港は液体燃料など取り扱いできる世界的な処理能力のある港として再整備されており、2025年に建設完了し2026年から運航開始を目指しています。
レムチャバン港は現在建設の第3フェーズを迎えており、完成後は自動管理システムが導入され、コンテナーの取り扱いが年間1,100万個から1,800万個まで拡大されます。
ウタパオ空港は2024年の運航をめざしており、完成後は旅客だけでなく、貨物の地上運送も今よりさらに拡大されることが期待されています。
また、空港周辺には自由貿易のエリアの設置や航空産業人材育成センター、航空機整備センター(MRO)も併せて開発され、このプロジェクトには日系企業も参加しています。
 
【COVID-19感染拡大後のタイ経済の状況】
2020年の第4半期までのBOI外国直接投資承認件数は657件、合計投資額にして約1,185億バーツにのぼり、この数値は前年度の同じ第4半期とくらべて件数にして2件、投資額にして29%減少となっています。
内訳としては、既存の事業拡大が472件、新規事業が185件投資国の第一位は日本で次いで中国です。
外国からの投資件数が前年度に比べれば減少はしていますが、継続的に増加しており、日本からのタイ渡航便も徐々に便数が増えていることからタイ経済が停滞することなく回復傾向にあることがわかります。
それでも、COVID-19感染拡大の影響で事業継続が困難な中小企業や収入が減少した個人については補助金や融資の支援などタイ政府はじめ銀行などの金融機関が様々な景気対策を発表しています。
JETROバンコクのウェブサイトなどにも翻訳されて詳細が掲載されていますが、主なものとして中小企業が雇用継続できるようにするための税制支援、低金利融資、法人税の納付期限の延長や輸入税の免除、
各銀行のソフトローンや債務支払いの延長などが挙げられています。
 
世界的なパンデミックにより成長する3つの分野
医療・健康分野については医療機器や医薬品製造業市場の強化に向けてBOIは税制の優遇措置を導入しさらに病院や臨床研究をさらに発展させることにより
包括的な医療サービスが行える医療ハブを目指し政府は投資支援を行っています。
また、テレワークやオンライン授業の需要が増え今後デジタル分野がデフォルトとして活用されていくため、投資促進を期待しています。
その他フードデリバリーなどを含むEコマース市場も拡大しており、それに伴う物流サービスも新規参入がまだまだ期待できると考えられています。
 
【次世代自動車産業】
タイ政府が推進する経済対策はEEC(東部経済回廊)を中心とし、その中でもタイの自動車産業はすでに重要なグローバル製造拠点であり、
2019年の生産は既存の生産技術を適応および拡張するために世界で11位にランクされ、さらに競争力を維持するために次世代の自動車産業が、
12の対象産業(S-Curve)の1つに定められ、潜在的な産業かつ国の経済を推進する上で重要な役割を果たすと考えられています。
 
タイ政府の政策と目標
ASEAN地域の次世代自動車生産のハブ拠点になることを目標にタイ政府は電気自動車のアクションプラン(2016-2036年)を掲げました。
その中で2036年までに合計120万台の電気自動車の普及と690基の充電ステーション設置を目標としています。
タイ政府が振興したい10産業(S Curve / New S Curve)にも次世代自動車産業が含まれており、経済活動を徐々に再開しているタイは
今年8月次世代自動車に関するセミナーが開催され、工業大臣が「EVのロードマップ」と題して講演しました。
 
まず短期目標として政府の公用車や空港・スクールバスといった公共バスまたバイクタクシーにxEV(様々なタイプの電気自動車)の使用を広め国内市場の需要喚起を狙います。
2022年までに60,000-100,000台の生産を目標としています。
中期目標としては、2021-2025年で100,000-250,000台のエコカー(低燃費小型車)と300,000台のスマートシティバスの生産を予定
長期目標は2026-2030年までの間に年間75万台の生産を目標に掲げています。これはタイの2030年の自動車生産台数目標が250万台ですのでその3割が次世代自動車の占める割合となっています。
 
また、xEVの普及を目的とした車両買い替えのための政策も掲げられました。現在使用年数が15年以上の古い車両を新しいEVに交換することを促進するため
最大100,000バーツの個人所得税控除など優遇措置を発表しました。
減税による販売促進で、自動車メーカ―の技術向上、そしてより多くの人に電気自動車への目を向けてもらいたいという狙いがあります。
またEVの普及は古い車両から排出される汚染物質やPM2.5の低減などにも効果があるとされ環境問題の改善にも役立つと考えられています。
 
BOIの恩典と現在の次世代自動車製造の進行状況(奨励承認件数)
BOIは電気自動車生産および関連サプライチェーンへの投資を促進するため2018年に期限切れとなった最初のEVパッケージに代わる新しいプロモーションパッケージを発表。
乗用車、バストラック、オートバイ、三輪車など幅広い次世代自動車の製造や研究開発に法人税の免除や物品税の減税など恩典を付与しています。
 
現在BOIが認可した電気自動車関連のプロジェクトには日系企業も多く参加しています。HEV(ハイブリッド電気自動車)製造が5件で合計生産能力は年間35万台以上、
PHEV(プラグインハイブリッド)が6件で合計生産能力は年間約8万7千台、BEV(バッテリー式電気自動車)が13件で合計生産能力は年間約12万5千台となっています。
その他電気バスは2件で合計生産能力は年間1600台か可能です。
また、関連部品や充電ステーションも認可対象となっており、現在バッテリーやプラグなど14件が奨励を受けその合計投資額は108億円にのぼります。
充電ステーションに関しては2件の奨励で合計11億以上の投資額となっており、4,500基弱の設置を予定しています。
今後BOIは2輪や3輪の電気自動車製造に関しても恩典を付与していく計画があるとのことです。
 
インフラ環境や法令整備
中古バッテリーの処理、再利用などを立法化、また国内でEV充電インフラの開発に取り組んでおり、エネルギー省が国内すべてのエリアで充電ステーションが建設できるように法整備を行っています。
すでに運行中のATTRIC(Automotive & Tire Testing, Research and Innovation Center)をはじめ、Electric Vehicle Battery Testing Centerも2020年に建設完了、
翌年5月から試験運行を開始する予定で、自動車製造から検査までタイ国内で一貫して行えるようになります。
次世代自動車に関連する人材育成もタイ自動車連盟など関連機関で積極的におこなっています。
 
2020年11月配信

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