タイのEV市場では、タイ政府のEVマスタープランを促進させることを目的に、活発な動きがみられます。
政府だけでなく民間企業も関連事業に乗り出し、インフラを含めたEVの普及・浸透のための環境整備も進められています。
日本企業にも様々な関わりがあり、タイ主要産業の一つである自動車産業において、今後もアセアン地域で牽引していく役割を全うしていくためにも、目が離せない状況です。
【タイのEV政策】
タイ政府は、国内のEVの普及・浸透を加速させるために、EV車を対象にした減税や、輸入関税の撤廃・引き下げを検討しています。
国家電気自動車政策委員会(Board of Electric Vehicle)は以下のような政策で、2022年の第一四半期への採用を検討しています。
・200万バーツ以下のEVに対して物品税を現在の8%から2%に引き下げる
また最大80%の輸入関税の割引と国からの補助金で全体価格から20%の割引をする
・200万バーツ以上のEVに対しても同様に物品税を現在の8%から2%に引き下げる
また、2年間で輸入関税の最大20%割引がある。補助金の適用はなし
これらの措置は、2022年以降の5年間で電気自動車の価格を下げ、より多くの消費者がEVを購入・使用しやすくなることを目的としています。
現在EVの輸入関税は、欧州ブランドに輸入税80%、日本20%、韓国40%となっており、中国のEVだけが0%となっています。中国以外のEV輸入関税を0%に引き下げるかどうかは2022年1月に正式発表されますが、0%の輸入関税を申請するEVに対して2年以内に1~1.5倍の比率でタイ国内での生産をしなければならないという条件が付されるか検討されています。
つまり1台のEVを海外から輸入する場合、国内で1.5台分の生産をするとともに、自動車用バッテリーやタイで製造されたPCUなどEVの主要な部品を使用する必要があります。
メルセデスベンツ・タイランドは上記条件のもと、2021年末にEQS(ベンツの高級EVモデル車)を納入する予定となっています。その後2022年初頭からタイ国内での組み立てを開始、同モデルの販売もタイ国内で開始される予定となっています。
トヨタ、ホンダ、三菱、日産アウディ、マツダといった日本の車両メーカーも、EV生産でBOIに投資促進計画を提出する自動車メーカーも、来年以降のタイEV市場への参入動向が注目されています。
その他2030年までに全国に合計12,000の高速充電(DC)ステーションが必要と考えられ、公共の充電ステーションを拡大する計画を検討しています。
EV委員会の委員長をつとめるスパッタナポン・パンミーチャオ副首相兼エネルギー大臣の発言
「タイは2030年のEV生産を自動車の総生産量の30%を目標とし、2035年にはタイで販売される新車は100%EVである必要があります。減税や補助金制度、また充電設備を全国に拡大するといったインフラ開発を通じて、今後、流通と生産の増加を奨励していきます。」
これらの措置は、国内のEV需要を高めると同時に、タイをアセアン地域のEV生産ハブとして成長させるための戦略の一つとなっており、2021年末までに正式決定される予定です。
【充電ステーションの共同開発】
TWZ社の子会社でEVの卸・マーケティング事業に従事しているスカイウェル・タイランド社はSolartron社とEVの充電ステーションを共同で設立する協力覚書について署名しました。また、両者はタイ初の太陽光発電充電ステーションを開発・建設・投資の合弁会社の設立を検討します。
太陽光エネルギーのスペシャリストであるSolartron社はドイツから30年以上の経験と高度な機械製造技術を持ち、タイ国内で太陽光関連製品を生産・販売しています。それらの製品はすべてアメリカ、英国、日本、タイなど世界的な工業製品規格の認証を取得しています。
【EGATとBMW新しい充電ステーション開設】
2021年12月17日 EGAT(タイ王国発電公社)とBMWとHomepro社(大型ホームセンターの経営やホームソリューション事業に従事)が協力して、EVユーザーへのサービスの強化を目的とした新しい充電ステーションを開発、ホアヒンのマーケットビレッジ内にて開設式を行いました。
‘EleX’と呼ばれる充電ステーションは高速充電などができる装置も装備され、同時に2台の車の充電をサポートすることが可能となっています。利用者はアプリで簡単に予約、充電、支払いができる仕組みになっています。今後ホアヒン以外に7つの商業充電ステーションを開設し、そのうち4つはバンコク中心部に位置し、マンションやアパートのEV利用者が収容できるようになる予定です。ほかの3つはバンバインーナコンラチャシーマー間高速道路のカオヤイ出入口付近に設置される予定となっています。
2022年にはタイ全地域の主要道路に14の充電ステーションを開設する予定になっています。
BMWタイランド社は2014年から国内の電気自動車のパイオニア的存在であり、長年にわたりラヨンの向上でPHEVモデルの組み立てなどを行ってきています。先月新モデルSUV BMW iXとiX3も販売開始され、EV市場の需要の高まりをサポートしたいと考えているようです。
2021年12月配信
メルマガ第12号 【タイのEV市場】
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