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タイ関連ニュース 2026年10月29日号

洪水の秋に考える、災害を越えてきた日本とタイ

対象期間:2026年10月22日(木)〜10月28日(水)

タイ関連のメルマガを再開しました。毎週木曜日に、タイ政府の発表や日本企業に関わる動きを、日本との比較と分析を添えてお届けします。

巻頭:タイの洪水と「お互いさま」

お弁当が消えたバンコク

2026年9月27日(日)、タイ政府は臨時閣議を開き、翌28日(月)と29日(火)を、バンコクなど4都県で臨時の休日とすることを決めた。今年の秋、タイでは洪水が続いている。

わたしの住むコンドミニアムはアソーク(スクンビット通り)周辺にあり、建物には問題がなかった。それでも、メイドさんはコンドミニアムに来ることができず、Grabで食べ物を頼むこともできなかった。

近くのセブンイレブンからはモノが消え、お弁当もなくなった。

一方、バンコク東部に住む友人の家の周りや、メイドさんの家の周りは水に浸かった。

友人は、自宅へ続く路地を歩きながら動画を撮って送ってくれた。いちばん深いのは、大通りから自宅の路地へ曲がるあたりだという。外のほうは水がとても深く、ひざより上まで来ていた。友人は「深さを測ってみる」と言って、メジャーを当てた。

自分の家が無事でも、人や物が動けなくなると、暮らしはすぐに止まる。

同じころ、日本でも台風25号で千葉県の川の堤防が切れ、10月には秋田の子吉川が氾濫した。

2011年、揺れは日本で、水はタイで

わたしが思い出すのは、2011年のことだ。

3月11日、わたしはバンコクから成田空港に着いたばかりだった。空港からそのままタクシーで丸の内のオフィスに向かい、会議に出る予定で、外にはほとんど出ないつもりだったため、暑いバンコクにいたときの薄着のまま帰国していた。14時46分、15時30分から来社されるクライアントとの打ち合わせの準備をしていたところで、地震が起きた。

その日は夜までビルから出られなかった。皆さんも覚えていらっしゃるだろうが、電車が止まり、大勢の人が歩いて家に帰った。わたしもそのひとりである。とても寒い日だった。タクシーで帰るつもりだった薄着のまま、寒さの中を歩いて帰ったことを覚えている。

その後、タイからは毛布や食料、医療チームが届いた。

同じ年の夏から秋にかけて、今度はタイが大洪水に見舞われた。7つの工業団地が冠水し、日系企業の工場約450社が操業を止めた。

このとき、わたしはバンコクにいた。日本の本社には、現地の状況がなかなか伝わらなかった。それでも「どうしてもクライアントの印鑑をもらってくるように」と言われ、わたしは四駆で行けるところまで行き、その先はプラスチックのたらいで作った即席の舟に乗り換えて、モーチット近くのクライアントのオフィスを訪ねた。こうして、ハンコをもらってきたのである。

そのとき日本から渡った排水ポンプ車は、震災のときに津波で溜まった海水を抜いていた車だった。

あの年、わたしは揺れを日本で、水をタイで経験した。

「お互いさま」という関係

日本とタイは、同じ年に、同じように揺れや水と向き合い、そのたびに手を差し伸べ合ってきた。一緒に災害を越えてきた経験があるから、何を大事にするかという価値観が重なりやすい。わたしはそう感じている。

今週の閣議では、大きな排水路の準備と災害保険の予算が決まった。タイで事業を行う日本企業にとっても、防災は「お互いさま」で考えるテーマだと、わたしは思う。

今週のタイ

① 家庭用太陽光の補助事業「Solar ภาคประชาชน」を閣議承認:1世帯5万バーツ、パネルはTIS規格必須に

10月27日の閣議で、家庭用太陽光の設置に1世帯5万バーツを補助する事業(予算500億バーツ、100万世帯)が承認された。パネルはTIS規格の取得が必須になる。

補助額1世帯(1メーター)5万バーツ。設置容量5〜10kWp(パネルとインバーターを含む)
予算・対象500億バーツ、100万世帯。エネルギー危機対策の緊急借入勅令(2569年)にもとづく借入金が財源
登録期間2026年10月27日〜2027年1月31日(先着順)。系統連系の申請は2027年8月31日まで、連系完了は9月30日まで
設置業者首都圏配電公社(MEA)か地方配電公社(PEA)、またはその登録業者に限る
機器の条件TIS(มอก.)またはIEC規格に適合し、タイ国内での保証があること
売電余剰電力は5kWまで、1単位2.20バーツで約20年間買い取り
  • 内容はエーカポップ首相府報道官(เอกภพ เพียรพิเศษ)が公表した。閣議は、歳入局に補助金を個人所得税の非課税とする法案の作成を、関税局に輸入関税免除の案の作成を、工業省に使用済みパネルの処分ルールづくりを求めた。
  • 財務省は関税の減免について「原則として異論はない」としたうえで、対象品目は工業省・BOI・財政政策局と協議して決めるとした。事業は「国内の材料・部品・機器・サービスの利用を促す」ものだとしている。対象品目のリストは10月28日時点で公表されていない。
  • 同じ週に、ワラウット・シラパアーチャー工業相(วราวุธ ศิลปอาชา)が、太陽電池パネル(มอก. 61730 เล่ม 2-2567)をTIS強制規格とする省令に署名した。報道は、官報への掲載は「近く」、施行は「今週中の見込み」としている。10月28日時点で官報への掲載は確認できていない。製造・輸入・販売業者は、販売前にTISのライセンスが必要になる。工業標準局(สมอ.)は、DCケーブル、リチウム電池、ヒューズ、インバーター、DCブレーカー、DCコネクター、接続箱の7品目も追加する予定。
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② BOI:1〜9月の投資申請は1兆7,074億バーツで前年同期比28%増、日本は国別4位

1〜9月の投資申請は1兆7,074億バーツで前年同期比28%増。日本は金額で国別4位、件数は192件。

外国からの投資申請(2026年1〜9月)、金額の上位5か国。BOIの発表をもとに作成
  • タイ投資委員会(BOI)は10月26日、2026年1〜9月の投資奨励申請が1,954件・1兆7,074億3,000万バーツだったと発表した(プレスリリースPR189/2569)。外国直接投資の申請は1,309件・1兆5,507億8,400万バーツ(62%増)。
  • 業種別では、デジタルが1兆1,700億バーツ超(139件)、電子・電気が1,893億7,000万バーツ(262件、7%増)、農業・食品が801億9,000万バーツ(218件、59%増)。AIサプライチェーン関連(データセンター、半導体、AIサーバーなど)は111件・1兆2,000億バーツ超。自動車・部品は363億4,000万バーツ(191件)。地域別では、中部と東部で申請額の93%を占める。
  • ナリット・タードサティーラックBOI長官(นฤตม์ เทอดสถีรศักดิ์):「ยอดขอรับการส่งเสริมการลงทุน 9 เดือนกว่า 1.7 ล้านล้านบาท สะท้อนทิศทางการลงทุนที่ให้น้ำหนักกับอุตสาหกรรมดิจิทัล」(9か月の申請額1.7兆バーツ超は、デジタル産業に重点を置いた投資の流れを表している)
  • 参考(対象期間の直前):BOIは10月19日、トヨタ・モーター・タイランドの約14億バーツの追加投資(チャチュンサオ県バンポー工場で水素燃料電池ピックアップを生産)を奨励承認したと発表した。
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③ 洪水対策の閣議決定2件:大型排水路への世界銀行の準備資金、災害保険の予算増額

タイ湾への大型排水路の準備に世界銀行の無償資金351万ドル。国民向け災害保険の予算も10億5,000万バーツ増額された。

  • 排水路:10月27日の閣議は、「チャイナート〜パーサック〜タイ湾 洪水排水路」事業の準備のため、世界銀行から351万ドルの無償資金を受け入れることを承認した。世界銀行は2026年10月31日までの署名を求めている。実施機関は王室灌漑局で、署名から18か月以内に調達と支出を終える。事業本体の予算は1,650億バーツで、9県にまたがり、期間は2027〜2034年。閣議は、借入交渉の条件にローカルコンテント(国内調達)を盛り込むこと、電線や道路などとの干渉に対応する事業管理委員会を設けることを求めた。
  • 災害保険:同じ閣議で、国民向け災害保険の購入事業の予算枠を155億バーツから165億5,000万バーツに増やすことを承認した(住宅向け160億5,000万バーツ、団体傷害保険5億バーツ)。当初の保険料にVATが含まれていなかったことが理由とされる。報道によれば、対象は約3,000万世帯。
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④ タイと世界:中国 ― メコン・ランツァン協力の資金で、鉄道を使った農産物輸出の研修

中国の資金で、タイ〜ラオス〜中国の鉄道を使った農産物輸出の研修(150人)を行う。投資申請の件数では中国が国別1位。

  • 10月27日の閣議は、商務省と在タイ中国大使館の間の「2025年メコン・ランツァン協力特別基金の事業協力協定」の案を承認した。中国側の資金は16万6,100ドル(122万9,100元以内)で、期間は3年。政府・民間・農業関係の150人を対象に、貿易やFTAの使い方などの研修を行う。実施はメコン研究所(Mekong Institute)。
  • ララダー副報道官:「รัฐบาลให้ความสำคัญกับการเพิ่มโอกาสทางการค้าให้ผู้ประกอบการไทย」(政府は、タイの事業者の貿易の機会を増やすことを重視している)
  • 参考(対象期間の前):10月16日の報道によれば、エークニティ副首相兼財務相は、APEC財務相会合(香港)の機会に中国の藍仏安財務相と会談した。中国からの投資について、AI・ロボット・半導体・スマート農業・EVの5分野を挙げ、国境を越える詐欺グループの資金の流れを追跡・遮断する協力も話し合った。具体的な合意の発表はない。
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⑤ 金利と為替:タイ中銀は政策金利1.00%を据え置き、バーツは年初から約7%下落

10月28日、タイ中央銀行の金融政策委員会は政策金利を1.00%に据え置いた。バーツは対ドルで年初から約7%下落し、対円でも1月をピークに下がっている。

  • 金融政策委員会(กนง.)は10月28日、全会一致(6票、1人欠席)で政策金利を年1.00%に据え置いた。成長率の見通しは2026年2.4%(前回2.3%)、2027年2.1%(同1.8%)に引き上げた。AIなどの技術関連の輸出と民間投資が予想より強いことを理由に挙げる一方、回復は一部の業種に偏っているとした。
  • 物価は、原油高などで2026年10〜12月期に初めて目標の上限(3%)を超え、2027年1〜3月期まで高い水準が続く見通し。年平均の見通しは2026年2.1%、2027年1.3%。委員会は「利下げの可能性を閉じていない(คณะกรรมการไม่ได้ปิดโอกาสการลดดอกเบี้ย)」とした。
  • 委員会は、バーツが年初から約7%下落したことについて、米国の金融引き締めの観測と原油高を反映したもので、経済の実態で説明できる範囲だとした。資金の流出は見られないとしている。10月28日朝のバーツは1ドル=33.80バーツ前後(カシコン・リサーチ)。
IMFのデータ(世界経済のネタ帳による集計)をもとに作成。2026年は1〜9月の平均
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特集:洪水と日タイ

今年の秋の被害と、両政府の主な対応

タイ日本
被害10月1日時点:30県で335万2,395人が被災、死者24人
10月25日時点:17県とバンコクで101万7,515人が被災。工業団地のある県(チャチュンサオ、チョンブリー、アユタヤなど)も含む
台風25号:死者17人、住家被害2,412棟(10月5日時点)。北印旛沼・長門川で堤防が決壊
10月21日:秋田県の子吉川で氾濫。「氾濫特別警報」が一時発表
初動9月27日の臨時閣議で、9月28日・29日を4都県の「特別の公務員休日」に(証券取引所は通常どおり)災害救助法を千葉県49市町村と東京都大島町に適用
予算・指定10月20日:予備費から105億バーツを追加
10月27日:災害保険の予算を増額、排水路の準備資金を承認
10月9日:激甚災害に指定の見込みと発表
10月21日:千葉県が108億円の補正予算

両国の政府はどう支えているか

今年の洪水への支援策を、分野ごとに並べた。

分野タイ日本(千葉豪雨〜台風25号)
世帯への給付浸水した世帯に一律9,000バーツ/5,000バーツ。アプリで申請し、送金で受け取る住宅の被害の程度に応じて支援金。全壊などで最大300万円
住宅の修理立替金で最大8万8,600バーツ。修理ローン(年0〜1.99%、最長40年)補修の場合の加算支援金100万円(全壊・大規模半壊など)
保険政府が約3,000万世帯分の災害保険を用意(洪水で最大10万バーツ)今回調べた発表には含まれていない
事業者返済猶予6か月、ソフトローン300億バーツ、機械を輸入して入れ替える場合の関税免除災害復旧貸付、セーフティネット保証4号(100%保証)、返済条件の緩和の要請
税修理費を所得控除(建物10万バーツ・車3万バーツまで)、納税期限の延長今回調べた国の発表には含まれていない(市の税・保険料の減免はある)
インフラ・自治体大型排水路の準備に世界銀行の資金(今週のタイ③)激甚災害の指定で、道路・河川の復旧への国の補助率を約71%→84%に
両国の支援策を詳しく読む

タイ

  • 一律の見舞金(閣議決定):5月15日〜9月30日の洪水が対象(66県とバンコク)。浸水して財産に被害があった世帯に1世帯9,000バーツ。7日を超えて水に囲まれて普段の生活ができなかった世帯と、7日を超えて影響を受けた高層住宅の住民には1世帯5,000バーツ。申請は政府アプリ「ทางรัฐ」か地方自治体の窓口。
  • 予算:10月20日の閣議で、2570年度予算の予備費から105億887万バーツの追加を承認。被災世帯として148万1,401世帯を挙げた。支払いは政府貯蓄銀行を通じ、PromptPay(国民ID番号などに紐づく送金)で振り込む。報道官は「予算が尽きたわけではなく、被災者に備えて用意するもの」と説明した。
  • 緊急の立替金(財務省規則):住宅の修理に1棟最大8万8,600バーツ、仮住まいの家賃に月2,500バーツ(2か月まで)、仕事道具に1家族最大1万3,500バーツなど。
  • 国民向け災害保険:2026年10月1日〜2027年10月1日、約3,000万世帯が対象。洪水の場合、住宅1棟につき最大10万バーツ。認められれば15日以内にPromptPayで支払う。
  • 金融・税(財務省の案を閣議が承認。10/20の報道):返済猶予(事業者は6か月)/住宅修理ローン(1人200万バーツまで、年0〜1.99%、最長40年)/緊急資金(5万バーツまで、最初の3か月は無利子)/中小企業向けソフトローン(総額300億バーツ、1社3,000万バーツまで、最初の2年は年3.50%以下)/修理費の所得控除/被災した工場・ホテルが機械・部品を輸入して入れ替える場合の輸入関税の免除(2027年3月31日まで)/納税・申告期限の延長。
  • 財務省が掲げた目的:「เพื่อให้ประชาชนและผู้ประกอบการ สามารถกลับมาดำเนินชีวิตและประกอบอาชีพได้ตามปกติโดยเร็ว」(人々と事業者ができるだけ早く、普段の生活と仕事に戻れるように)

日本

  • 激甚災害:内閣府は10月9日、梅雨前線豪雨から台風25号までの一連の災害を激甚災害に指定する見込みと発表した。公共土木施設の復旧への国の補助率を約71%から84%に、農地を約86%から97%に引き上げるなど7項目。
  • 被災者生活再建支援法:千葉県は10月23日、県内全域への適用を発表した。住宅が全壊などの世帯に基礎支援金100万円(大規模半壊は50万円)、再建の方法に応じて加算支援金(建設・購入200万円、補修100万円、賃借50万円など)。
  • 中小企業(経済産業省、9月24日):特別相談窓口、日本政策金融公庫・商工中金の災害復旧貸付、セーフティネット保証4号(一般の保証とは別枠で100%保証)、既存の借入の返済条件の緩和の要請など。
  • 千葉県(10月21日):108億6,200万円の補正予算(専決処分)。応急仮設住宅の借り上げ、被災者の宿泊先の確保、河川の緊急対策など。暮らしの再建や地域の復興への支援は、12月の補正予算で検討するとしている。
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日本とタイの「お互いさま」の年表

日本→タイ日本からタイへの支援 タイ→日本タイから日本への支援

  1. 2004年12月 インド洋津波
    日本→タイ自衛隊の艦艇3隻、国際緊急援助隊の救助・医療チーム、遺体の身元確認のためのDNA鑑定の専門家
  2. 2011年3月 東日本大震災
    タイ→日本毛布・缶詰・マスク・寝袋・防寒具などの物資と寄附金、医療支援チーム
  3. 2011年7月〜 タイの大洪水(死者約800人、7つの工業団地が冠水、日系企業の工場約450社が操業停止)
    日本→タイ緊急物資(約5,500万円相当)、10億円を限度とする緊急無償資金協力、国際緊急援助隊。排水ポンプ車10台が32日間、24時間態勢で排水。この車は震災のとき、津波で溜まった海水の排水にも使われていた。その後、チャオプラヤ川流域の洪水対策マスタープランも支援
  4. 2012年7月 九州北部豪雨
    タイ→日本タイ政府が500万バーツ(報道)
  5. 2025年11月 タイ南部の洪水(約300万人が被災)
    日本→タイJICAを通じてテント・毛布・浄水器など。JICAの代表は「友人が困っているときは助け合う」と述べた
  6. 2026年秋 両国で水害
    日本・タイタイでは各地で洪水、日本では台風25号と子吉川の氾濫(上の表)
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日タイ比べ読み:対象期間(10/22〜10/28)に、両国政府から日タイ間の会談・協議の発表は見つからなかった。

分析と提言:日本企業にとって

以下は、上の事実をもとにした分析と提言である。

両国の支援策を比べると

  • タイは、浸水の日数などで区分した定額を、アプリと送金の仕組みを使って、広く早く世帯に届けることに重きを置いているように見える。災害保険も、約3,000万世帯を対象にまとめて用意している。
  • 日本は、法律で決まっている仕組みを発動する形で、住宅の壊れ方(全壊・半壊など)に応じて金額が決まる。国の支援の多くは、自治体が行う道路や河川の復旧の負担を軽くする形をとる。
  • 事業者向けは、両国とも融資・返済猶予・保証が中心。タイはこれに、修理費の所得控除や、被災した工場が機械を入れ替える際の関税免除など、税での支援を組み合わせている。

提言

  1. 拠点の浸水リスクと保険を見直す今年も工業団地のある県が被災した。タイ政府は排水路の準備と災害保険に予算を付けているが、排水路の本体は2027〜2034年の計画で、資金調達もまだ決まっていない。2011年の経験も踏まえ、自社の拠点・取引先の浸水リスクと保険の内容を確認しておきたい。
  2. 被災した場合は、タイの支援策を使う機械・部品を輸入して入れ替える場合の関税免除(2027年3月31日まで)と、中小企業向けソフトローンは、タイに工場を持つ日本企業にも実務上の選択肢になりうる。
  3. 太陽光の補助は、規格・登録・調達の3点で準備するパネル・インバーター・周辺機器を扱うメーカーや輸入販売会社には需要が増える機会になる。ただし、TISライセンスの取得が販売の前提になり、追加の7品目が決まれば対象はさらに広がる。タイで施工する場合はMEA/PEAへの業者登録が、顧客が補助を受ける条件になる。関税減免は「国内調達の促進」を前提に決まるため、輸入で売るか、現地で作るか・組むかで条件が変わる可能性がある。
  4. 投資の数字は、金額と件数の両方で見る金額ではシンガポールが1兆1,646億バーツ(214件)と突出している。業種別ではデジタルが1兆1,700億バーツ超(139件)あり、データセンターなどの大型案件が金額を押し上げているとみられる(国別と業種別の内訳を掛け合わせた数字は公表されていない)。一方、件数では中国が493件(634億バーツ)で最も多く、日本は192件(455億バーツ)で、金額は4位だが件数は中国・シンガポールに次ぐ3位である。1件あたりの金額に直すと、国ごとの投資の性格の違いがはっきりする。
    国金額(億バーツ)件数1件あたり(億バーツ)
    シンガポール11,64621454.4
    中国6344931.3
    英国4831532.2
    日本4551922.4
    台湾432706.2

    BOIの発表(2026年1〜9月の投資申請、金額の上位5か国)をもとに作成。1件あたりは金額÷件数

    シンガポールと英国は少ない件数で大きな金額、中国と日本は件数が多く1件あたりは小さい。日本企業の申請は、中小規模の案件を数多く積み上げる形になっているといえる。AI・データセンター関連の大型案件が続けば、電力・冷却・建設・電子部品などで日系サプライヤーの商機が広がる可能性がある一方、工業団地の土地・電力・人材の取り合いが強まる可能性もある。

  5. 為替の前提を見直す1バーツあたりの円は、2021年の年平均3.43円から2026年1〜9月平均の4.88円へ、約4割上がった。円で見ると、タイでの人件費・現地調達・家賃などの費用はそれだけ重くなっている。一方、2026年に入ってからはバーツ安に振れ、9月は4.71円まで戻している。タイ中銀は利下げの可能性を残し、物価は年末にかけて一時3%を超える見通しである。タイに拠点を持つ日本企業は、予算や投資計画で使う為替の前提と、バーツ建ての収益を円に直したときの見え方を、あらためて確認しておきたい。
  6. タイと中国の動きを、取引先・競合の両面で追うタイ政府は、ラオス経由の鉄道で中国へ農産物を運ぶルートづくりを、中国の資金も使って進めている。食品・物流の日本企業にとっては、中国向けの物流の選択肢が増える動きである。また、財務相レベルでAI・半導体・EVなどへの中国からの投資を呼び込もうとしており、同じ分野でタイに拠点を持つ日本企業にとっては、取引先にも競合にもなりうる。
  7. 大型の治水事業の調達を見ておく排水路事業は、今後、設計・施工・ポンプ・ゲート設備などの調達が出てくる可能性がある。ただし、閣議がローカルコンテントを借入交渉の条件に入れるよう求めている点は、外資の参入条件に影響しうる。